— 母と訪れた東京オペラシティ展覧会レポ —
11月30日(日)、母と一緒に「東京オペラシティ アートギャラリー」で開催中の
《柚木沙弥郎(ゆのきさみろう) 永遠のいま》展 に足を運びました。
柚木沙弥郎さんは、101歳で亡くなるまで第一線で作品を作り続けた染色家。
民藝の枠を越え、版画・絵本・コラージュなど幅広い表現を続けた、
まさに “生涯現役のアーティスト” です。
作品だけでなく、彼の言葉、生き方そのものに胸を揺さぶられた2時間。
2025年11月30日、私は「明日からこの言葉を胸に歩こう」と静かに決意した日でもありました。
柚木沙弥郎(ゆのきさみろう)とは?
染色、版画、絵本…ジャンルを越えて創り続けた「自由な表現者」
柚木沙弥郎さん(1922-2024)は、日本を代表する染色家のひとり。
民藝運動の流れを継ぎながらも、その枠に収まらず、
型染め・版画・コラージュ・絵本制作 など幅広い表現を展開してきました。
晩年もなお、新しい挑戦を続け、101歳で逝去されるまで“生涯現役”。
彼の創作姿勢は、年齢にとらわれない「軽やかさ」と「ユーモア」が入り混じり、自由そのもの。
母に誘われて
新宿・初台にある「東京オペラシティ アートギャラリー」。
母は以前から柚木さんの大ファンで、柚木さんの展示を見るのは2回目(前回は盛岡の展示)
そんな母に誘われ、私は今回初めて“実物”を目にしてきました。

会場に入ると、想像以上に大きく、力強い作品の数々。
ただ眺めるだけではなく、柚木さんの創作への向き合い方や、
さりげない言葉のひとつひとつに、じわじわと心がほどけていきました。
気づいたら2時間があっという間。「来てよかった」と心から思える濃い時間でした。

柚木さんとの出会いは、神戸の義母の家だった

実は、私が柚木さんを知ったのは わずか8ヶ月前 のこと。
神戸の義母の家で、のんびり日向ぼっこしていた休日。
義母が庭で洗濯物を干しながら、
「NHKの日曜美術館で、柚木沙弥郎さんの再放送をしているよ」と声をかけてくれたのがきっかけでした。
番組では、ハンディキャップを抱えながら絵を描き続ける少年と柚木さんの交流が描かれていて、
“ワクワクすることの尊さ” を思い出させてくれる内容。
90歳以上年の離れた2人が、“表現を愛する友達” のように対等に関わる姿に胸が熱くなり、涙が止まりませんでした。
その日から、私は柚木さんの作品が気になって仕方なくなり、
義母が大切にしていたアートブックを見せてもらいながら、「今年の推しは柚木さん」と心に決めていました。
実物の作品から伝わる圧倒的なエネルギー
会場では撮影禁止のため写真は残せなかったのですが、
大きな“鯉のぼり”だけは撮影が許可されていました。

柚木さんの型染めの作品は、大胆な色使いとシンプルで個性的な柄が特徴で、
動物や人の表情にはユーモアがあり、ゆるゆると心が解けるような可愛らしさ。
どの作品にも、その表現に至った物語を感じさせる、メッセージ性の高いデザイン。
私が生まれる前の作品なのに、どこか新しささえ感じるところに、魅力を感じます。
そして、作品そのものから「生きている証」が伝わってくる。
眺めながら、心がポッと明るくなるような力をもらえるような感覚があります。
私の個人的な感覚ですが、その理由には、
柚木さんの作品には「見る人への思いやり」が込められていることがあるのかなと思います。
染め布から、絵手紙から、包装紙から、壁画から、どれを見ていても、彼が見る人を楽しませようとする配慮が感じられる。“愛”がにじみ出てくるのです。
テレビで見たあの温かい人柄そのままが、作品からもひしひしと伝わってくるのを感じました。
暮らしを豊かにするものは、愛着の積み重ね
柚木さんの言葉で、特に心に残った一節があります。
「日本人の暮らしが、もっと豊かになるといいな」
「生活の道具は、大事にしようとすると、物も応えてくれる」
ここでいう「豊かさ」は、お金の話ではありません。
気に入ったものを大切に使う心。
暮らしの道具に愛着を持つこと。
毎日をていねいに楽しむ姿勢。これは、まさに私の“台所道”そのもの。
思わず「それ、それ!」と心の中で頷いていました。

“変化してしまう自分” を肯定してくれた言葉
柚木さんは、染色だけでなく、絵本、人形、版画、コラージュ…
年齢を重ねてもどんどん新しい表現に挑戦していました。
そしてこんな言葉を残しています。
「同じ仕事を続けることは、自分自身の模倣になる」
「ジャンルに意味はない」
「心の中は自由でいい」
私はこの言葉に救われました。
私はいつも、ひとつのことに没頭し、ある程度できると次の興味に向かってしまう。
発酵料理講師、集客コンサル、インスタ代行、動画制作、
その前はアクセサリー作家、料理家アシスタント、フリーアナウンサー…。
「私は一体何者なの?」
そう悩んだ時期もありました。
でも、柚木さんの言葉に出会って思ったのです。
私は“自分の模倣”をしたくないから変化していくんだ。
それは欠点じゃなくて、私らしさなんだ。
長年抱えていたコンプレックスが、スッと消えていきました。

101歳の言葉の力

「毎日が新しい今日で、日々の積み重ねがいい人生になる」
これは、主婦であり暮らしがど真ん中の私や母にとって、すごく響く言葉でした。
特別な何かをしなくても、毎日の小さな暮らしをコツコツと重ねることこそが、人生を豊かにする。
今を一生懸命生きれば、それでいいんだよと、背中を押してくれる。
3月、柚木沙弥郎さんの存在を、義母に教えてもらえたこと。
11月、母に一緒に行こうと機会を作ってもらえたこと。
そういう当たり前のようで、ありがたい毎日の出来事が、
いい人生の一片になっているのだなと実感しています。
101歳まで生きた、心豊かな表現者の作品や言葉に触れる時間は、
どんなコーチングを受けるよりも、納得感があり、素敵なひと時でした。
あと1ヶ月で2026年がスタートしますね。
もっと自由に、もっと軽やかに。
コンプレックスを脱ぎ捨て、「永遠のいま」を生きていこうと思います。
展示情報
柚木沙弥郎(ゆのきさみろう) 永遠のいま
📍東京オペラシティ アートギャラリー
📅 〜12月21日まで(休館日:月曜)



